<新型コロナ>たばこで「重症化のリスク」 市が注意呼び掛け
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、川崎市は主要駅周辺にある指定喫煙場所全十五カ所を閉鎖している。同感染症が喫煙により重症化するリスクも指摘されており、市は喫煙を巡り市民にさまざまな呼び掛けをしている。 (山本哲正)
JR川崎駅周辺の指定喫煙場所では今月二十日に封鎖された後も、立ち寄りかけて戸惑う喫煙者は絶えない。
市地域安全推進課によると、マスクを外してたばこを吸う場所だけに「密集」「密接」の状態は避けられないと、一時的な閉鎖を決めた。周囲にテープを張り、喫煙所に立ち入れないようにし、駅周辺での喫煙を控えるよう呼びかけている。
たばこを巡るリスクは喫煙所だけではない。家庭から出るごみを担当する市減量推進課は、使用済みのマスクやティッシュなどを袋に入れてしっかり封をしてからごみに出すよう呼びかけており、口にしたたばこの吸い殻も同じだという。収集業務にあたる職員や、ごみ集積場を利用する住民らを感染から守るためで、内田洋平課長は「少しでも感染の疑いがあれば、徹底してほしい」と訴えた。
市の健康福祉センターの担当者は「ストレスがたまることで依存的な行動になることが災害時などによくある」として、外出自粛のストレスや不安から喫煙量が増えることを懸念。センターがまとめたストレス対処法のちらしでは、たばこやお酒などに頼らないよう助言している。
厚労省はホームページで「新型コロナウイルス感染症と喫煙について」の文書を掲載し、重症化リスクの世界保健機関(WHO)による指摘などを紹介している。市健康増進課の久々津裕敏課長は、今年四月に完全施行された改正健康増進法で、望まない受動喫煙が起きないよう喫煙者に周囲への配慮義務が課せられたことに基づいて「家庭での受動喫煙も避けて」と呼び掛けている。
長引く外出自粛で、家庭での受動喫煙の増加が心配されている。日本医師会常任理事で川崎市幸区で「はとりクリニック」を営む羽鳥裕さん=写真、本人提供=は、喫煙者とその家族に注意を呼び掛ける。
「これから多くの人が感染していく懸念がある中で、喫煙はリスクが高いと皆さんに知ってほしい」。中国・武漢や米国のデータから、喫煙者ほど重症化しやすい傾向がみられることを強調し、「自分のためにも家族のためにも喫煙を控えて」と訴える。
喫煙は、たんを肺の中で上へとかき出す繊毛を失わせ、肺胞の上皮の粘膜による異物をブロックする機能も弱めると言う。「すると新型コロナウイルスが咽頭から気道、肺胞の奥に落ち込んで増殖する」。また長年の喫煙で慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)になっていると肺機能は極端に落ちている。こうしたことから「どうも喫煙者は非喫煙者より二・五倍~三倍くらい重症化しやすい」という。
電子たばこによっても肺機能が衰える急性呼吸窮迫症候群(ARDS)になる疑いが米国で報告されていることも加えた。
受動喫煙した人も重症化しやすい可能性を、羽鳥さんは「高い」とみる。「家庭で受動喫煙をしていれば、その分たばこの煙が肺に入っていることになる。同じような肺機能低下が起き、重症化も一定の率で高くなる可能性が高い」と注意を促す一方、「肺の老化は生理的に一定のスピードで進むが、たばこをやめたらやめただけの効果はきっとある」と語った。