電子たばこは紙巻きたばこと同様に歯周組織にダメージを与える、ニューヨーク大学研究チーム報告
電子タバコは歯周病のリスク
タバコは歯周病のリスク因子として悪名高いが、電子タバコもやはり歯周組織にダメージを与えるというエビデンスが報告された。
米ニューヨーク大学(NYU)のDeepak Saxena氏らの研究によるもので、詳細は「mBio」に2月22日掲載された。
電子タバコ利用者の口内細菌叢は、非喫煙者よりも喫煙者に近い特徴を有しているとのことだ。Saxena氏は、「この結果は、電子タバコを利用すべきでないという、ごくシンプルな事実を物語っている」と述べている。
口の中に生息する細菌は、バイオフィルムという粘着性の膜を形成して繁殖する。歯の表面のバイオフィルムは、毎日の歯磨きと定期的な歯科受診によってコントロール可能だ。
しかし、歯と歯茎の間に深い歯周ポケットがあると十分にクリーニングできず、細菌が産生する毒素が組織を刺激し、慢性的な炎症反応が引き起こされる。
これが歯周病と呼ばれる状態だ。米国歯周病学会によると、喫煙は歯茎を脆弱にして歯周病のリスクを高めるという。
そして今回のSaxena氏らの研究で、従来型タバコだけでなく、電子タバコも口内細菌叢のバランスを乱し、炎症や感染を起こしやすくする可能性が示された。
Saxena氏らは、成人84人の口内細菌叢の変化を6カ月間にわたり観察するという研究を行った。研究対象者のうち、従来型タバコの喫煙者が27人、電子タバコ利用者が28人、非喫煙者が29人だった。
6カ月間で全ての群の口内細菌叢の組成に変化が見られたが、全体的に前二者は非喫煙者に比較して、Selenomonas、Leptotrichia、Saccharibacteriaという細菌の割合が高かった。
電子タバコ利用者の口内には、歯周病を進行させることが明らかになっている、FusobacteriumやBacteroidalesという細菌が多いことも明らかになった。
また、研究参加者全員に何らかの歯周病の所見が認められた。ただしその重症度が異なり、従来型タバコ喫煙者は約80%が重症と判定された一方、非喫煙者の多くは軽症または中等症にとどまっていた。電子タバコ利用者はそれら両者の中間に当たり、約40%が重症と判定された。
Saxena氏によると、従来型タバコの喫煙によって生じる白板症(口腔粘膜や舌にできる白い斑点のことで前がん病変とされる)に関しては、電子タバコがまだ比較的新しい製品であるため、利用した場合にそのリスクが上昇するのかは不明だという。
ただし、「電子タバコはタバコの葉を燃焼はさせないものの、それ自体に問題のある成分が含まれている」とのことだ。
具体的には、プロピレングリコール、グリセロール、香料などや、製品によってはニコチンも含む液体が加熱されたとき、蒸気とともに有毒化学物質が生成されると解説する。
米国肺協会(ALA)の医療部門のトップであるAlbert Rizzo氏も、「電子タバコの蒸気は多くの人々が信じているような無害な存在ではなく、発がんを促すことが知られている重金属や化学物質が含まれている」と話す。
ただし、長期間の喫煙で問題になる肺気腫や慢性気管支炎などの疾患リスクが、電子タバコの利用でも上昇するのかは、電子タバコの歴史がまだ浅いために明らかでないとのことだ。
とは言え今回発表された研究のように、短期的な悪影響の存在を示唆するエビデンスの蓄積が進んでいる。
「電子タバコが十代の若者や若年成人に人気であることを考慮すると、この問題は深刻だ」とRizzo氏は語る。
短期的な悪影響を示すエビデンスの一つとして同氏は、ALAの資金提供により実施された研究の結果を紹介している。その研究では、電子タバコの利用を始めた若年成人は、1年以内に喘鳴と空咳を発症しやすいことが分かったという。
このような電子タバコの潜在的な危険性について、親が子どもに伝えることが重要だと、Rizzo氏とSaxena氏はともに指摘している。
またRizzo氏によると、「成人の喫煙者に対して、電子タバコが禁煙の助けになるというロジックが宣伝に使われている。しかし、電子タバコで禁煙成功率が高まるという確固たるエビデンスはない。実際には禁煙のために、カウンセリングや米食品医薬品局が承認した薬剤が使われているのが現状だ」と付け加えて注意喚起している。(HealthDay News 2022年2月22日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://journals.asm.org/doi/full/10.1128/mbio.00075-22
構成/DIME編集部