米高校生の喫煙者を増やした電子たばこメーカー、15歳の少女らに訴えられる
米ジュールラボ社の電子たばこが高校生の間で人気を集め物議を醸している。同社はフルーツ風味のフレーバーやキャッチーなパッケージで、ティーンエイジャーに自社製品を売り込んでいるとして長らく批判を浴びてきた。そして先日、フロリダ州サラソータ在住の15歳の少女とその家族らが、ジュールラボ社とたばこメーカー、アルトリア・グループ社(フィリップ・モリス社の親会社)を相手に集団訴訟を起こした。
訴状では、ジュールラボ社が「自社の電子たばこが非喫煙者に害を及ぼすこと、喫煙者の場合もニコチン中毒悪化の危険を与えることを知っていた」と主張。アルトリア社はジュールラボ社の株を35パーセント所有しているため、被告に加えられた。
A.N.と訴状に表記されている少女が、Juulを使用し始めたのは14歳のとき。フルーティなマンゴーフレーバーだったので、愛用していたと述べた。訴状によれば、当時少女は製品にニコチンが含まれていることを知らなかった。1年後、少女は電子たばこの中毒となり、ごくまれにニコチン中毒の副作用として起こる卒中を起こした。おそらく、まれに見られるニコチン中毒の副作用と考えられている。
「保健当局では、若者による電子たばこの利用を社会問題とみています。その責任は被告側にあります」と訴状に書かれている。「巨大たばこ産業が過去に行ったマーケティング手法に倣って、被告は金もうけのために、喫煙者の代わりとして若者に目を向けたのです」
訴訟の他にも、ティーンエイジャーの電子たばこ利用を取り締まろうという動きは広まっている。アメリカ国立衛生研究所の最新の調査によると、10代の電子たばこ利用者数は指数関数的に増えており、2018年には、過去30日以内に電子たばこを利用したティーンの数は前年の11パーセントから21パーセント近くに増加した。疾病予防管理センターの調査でも、490万人の中高生が過去30日以内に電子たばこを使ったと回答。2017年の130万人を上回った。一般的に電子たばこは、従来の喫煙方法より安全だと言われているが、それでもかなりの量のニコチンが含まれている。また最近行われた調査では、脳卒中や心臓発作の危険が増加するなど、様々な健康被害の可能性も指摘されている。
ジュールラボ社の主張
とりわけシリコンバレーに拠点を置くスタートアップ企業ジュールラボ社は高い人気を誇り、電子たばこ市場の約75パーセントのシェアを握っている。控え目なパッケージ(USBドライブのような外見のため、保護者や教師の目をごまかしやすい)と幅広いフルーツフレーバー、そして何よりもソーシャルメディアを主体とした広告キャンペーンで(スタンフォード大学の研究者は「明らかに若者向け」としている)、ジュールラボ社は10代をターゲットにしているとして食品医薬品局(FDA)から目をつけられていた。FDAはジュールラボ社製を品取り扱う60社以上の業者に文書を送り、未成年社には販売しないよう警告した。
Juul社は原告の主張を否定しているが、FDA対策として、フレイバー付き電子たばこの大半を店頭から引き上げるなど、ささやかながら公的措置に踏み出した。「若者にジュールラボの利用を促そうと意図したことは決してありません」と、ジュールラボ社のCEOケヴィン・バーンズ氏は昨年声明を発表した。
ジュールラボ社の広報担当者はローリングストーン誌に宛てた声明のなかで、故意に若者をターゲットにしたという主張をあらためて否認した。「ジュールラボ社は、世界の死亡原因No.1である可燃性たばこの廃絶に取り組んでいます」と、広報担当者。「我が社の製品は、成人喫煙者向けの代用品として開発されました。非喫煙者、ましてや若者に対して、我が社の製品を利用させようとしたことは一度もありません。この目的を達成するため、我が社は未成年者の利用を減らすべく、積極的な対応策を打ち出しました。未成年者の利用は我々のミッションとは相反するものだからです。まったく逆の主張をしている今回の訴訟は、なんのメリットもありません。我々は裁判で、我が社ののミッションを擁護していきます」